法人を設立する際に必ず作成しなければならないのが「定款」です。定款とは、会社の基本的なルールを定めた書類で、法務局への登記申請の際にも必要になります。今回は、1人で法人を設立する際の定款の書き方や注意点について解説します。
定款の基本構成
定款には、法律で定められた必須事項(絶対的記載事項)と、記載すれば有効な事項(相対的記載事項)、記載が自由な事項(任意的記載事項)があります。
1. 絶対的記載事項(必ず記載しなければならないもの)
- 商号(会社名)
- 目的(事業内容)
- 本店所在地(登記する住所)
- 設立時の出資額(資本金の額)
- 発起人の氏名・住所(設立する人の情報)
- 発行可能株式総数(発行できる株式の上限)
2. 相対的記載事項(記載しないと効力がないもの)
- 株式の譲渡制限(株式を自由に売買できないようにする場合)
- 取締役の任期(通常2年だが、変更可能)
- 利益配当のルール(剰余金の配分など)
3. 任意的記載事項(会社独自のルール)
- 事業年度(決算期の設定)
- 公告方法(官報掲載、電子公告など)
- 役員報酬の決定方法
1人法人設立時の定款のポイント
1. 取締役の任期を10年に設定
通常、株式会社の取締役の任期は 2年 ですが、 非公開会社(上場していない会社) の場合、 最大10年まで 任期を延ばすことができます。
なぜ10年がよいのか?
- 役員変更の登記費用を節約できる(2年ごとの変更は手間と費用がかかる)
- 1人会社では実質的な変更がない(頻繁な役員改選は不要)
1人で法人を運営する場合、取締役の変更はほぼ不要なので、 10年に設定しておくと手続きの負担が減ります。
2. 株式の譲渡制限を設ける
1人で設立する法人は、 株式の譲渡を制限する条項 を入れることで、第三者に勝手に株式を譲渡されるリスクを防げます。
例:
「当会社の株式を譲渡する場合は、取締役会の承認を必要とする。」
3. 事業目的を広めに設定する
定款に記載した事業内容以外の事業を行う場合、 定款変更が必要 になり、手続きにコストと時間がかかります。そのため、最初から 幅広く事業内容を設定 しておくとよいでしょう。
例:
- 不動産の売買、賃貸、管理及び仲介業
- インターネットを利用した各種情報提供サービス
- 飲食店の経営及びコンサルティング
電子定款を活用してコストを抑える
定款を紙で作成すると 4万円の収入印紙代 がかかりますが、 電子定款 を利用すると 印紙代が不要 になります。
電子定款の作成方法
- freee会社設立 や マネーフォワードクラウド会社設立 などのオンラインサービスを利用する
- 司法書士や行政書士に依頼する(手数料がかかる)
- 自分で電子署名を取得し、Adobe AcrobatなどでPDF化(手間がかかる)
まとめ
1人で法人を設立する際、定款を適切に作成することで 後々の手続きの手間やコストを抑えられます。
- 取締役の任期を10年にする ことで役員変更の登記を減らせる
- 株式の譲渡制限を設ける ことで第三者の介入を防ぐ
- 事業目的を広めに設定する ことで将来的な事業変更をスムーズにする
- 電子定款を活用する ことで設立コストを抑える
定款は 法人のルールを決める重要な書類 なので、設立前にしっかりと考えて作成しましょう!
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